間違いない

ハロマンスは打って一週間後、血中濃度が最高到達点に達し、5日間それが持続して下がって行く。

前回は5日目の夕方精神不安定を訴えていた空君だったが、今回は6日目の夕方

またおかしくなってきた。

と言い始めた。

前回今回と丁度ハロマンスが下がってくる時に調子を落とした空君。

空君の不調がハロマンスの血中濃度が上がったり下がったりするのと連動しているのはほぼ間違いない。

それを

お母さんがリスパダールルーランを調節したから空君の調子が落ちたんだだとか言って。

だいたいそれを言うなら、何でリスパとルーランは量を微調整しちゃダメで、ハロマンスは量が変わってもいいの?

ハロマンスの一か月の平均CP換算値は一日200だから、一番血中濃度が高くなっている時で300くらい、低くなってる時は150とすると、上がる時は一週間で150増えることになり、下がる時は二週間ちょっとで150減ることになる。

ハロペリドールハロマンスの成分みたいにドーパミンを強く抑える薬が短い期間にそんなに増えたり減ったりすれば脳にいいわけがない。

実際ハロマンスで精神状態にマイナスの影響が出ているのに、それを変えようとしないのは、医師曰く、

僕は変えるのが好きじゃないから。

万一変えて今よりも悪くなったら困るから、今くらいの状態だったら我慢してくれないかな、ということらしい。

前の処方をそのまま引き継ぐだけで、同じ薬を同じやり方で継続する。

私でもできる。

そんなのお医者さんじゃなくても誰でもできる。

もっと自分の頭でよーく考えてくれないかな、と思う。

錠剤に変えてみて万一悪くなったらまた注射にしてみればいいんじゃないの?

というような意味のことを私が言ったら、医師はなるほどと言っていた。

ハロマンスは打てば一か月効果が持続すると習いました。

と言うN医師。

習ったのはそりゃそうでしょうけれども、実際は教科書通りにいかないのが現実でしょう。

うん、そうですよね。そういう風に習ったと思います。おおまかにはそうです。でも細かく見ていくといろいろとあるんですよ。少年院にいたときも、血中濃度が減ったときに不穏になるということで、3週間打ちになったのですし、ハロマンスの血中濃度の増減に空君が左右されやすすいのは少年院のT先生も認めています。

私がそう言うと、T先生の名前を出したところでN医師の顔が曇った。

どうやらN医師、T医師のやり方を口に出すと機嫌が悪くなるらしい。

今はN医師が担当医なんだから、僕のやり方でやらせてもらいます、ということなんだろう。

N医師の性格は分かった。

あんまりよく考えないけど石橋を叩いて渡る性格。

外見は爽やかそうだけど、結構プライドは高い。

空君本人はどうなの?

N医師に聞かれて、

それは注射はいやですよ。

空君は答えた。

それは注射を打つっていうこと自体がいやなんじゃなくて?

医師の質問に

打つっていうのもいやだけど、飲んだ後精神が不安定になるのもいやです。

と答えた空君。

それじゃね、錠剤にしましょう。

N医師は笑顔で空君にそう言った後、真顔になって私に言った。

一応錠剤にするという流れで行こうと思いますけど、後2週間、ハロマンスの効果を見ていきたいと思います。

はい、わかりました。

私は答えた。

打ってから3週目からは状態は落ち着いてくると思いますよ。

それはハロマンスが効いているからじゃなくて、ただ血中濃度の下がり方が緩やかになったからなんですけどね。

これ以上N医師に嫌われても今後やりづらくなると思ったので、それは言うのは止めておいた。

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