夏の残骸   始まりの話

僕の住む村には、奇妙な風習がある。

コゴミという人形が祀っている場所で毎年八月お祭りを開く。

それだけなら別にどうってことないのだけど、必ずその祭りの後に人がいなくなる。

それも、十四歳の少女だけが。

「あんなのはただの迷信よ。その証拠にあの日からもう誰もいなくなってないじゃない」

僕がこの話を持ち出すと母親はいつもそんなことを言う。

きっと、妹がもしいなくなっていたとしたら、そんなことは口が裂けたって言わないはずなのに。

どうして僕がこのことに執着するのか。

それは、夏美がいなくなってしまったから。

そして、夏美がいなくなった八年前から祭りを行っても誰もいなくならなくなったから。

なぜ、最後が夏美だったのか。

本当に偶然だったのか。

一人、一人と毎年少女が消えて行ったのは、どうしてなのか。

僕は疑問だらけだった。

原夏美は僕の初恋の人だった。

だった、と過去にしてしまわなくてはいけないことが苦しい。

夏美が生きているのか死んでいるのか誰にもわからない。

だけど暗黙の了解みたいなもので、夏美はもうこの世にいないものとされている。

僕だけは信じていなくては、といつも思うけれど、周りの大人たちの態度を見ていると心が折れそうになる。

僕自身は高校を卒業した後、東京の大学に進学したから、この村からはしばらく離れていた。

大学をもうすぐ卒業する今年、休みを利用して村に帰ってきていた。

休みのたびに帰ってきていたわけじゃなかった。

就職先も決まって、これからの人生をしっかり歩く為には、夏美のことを思い出にしなくてはいけない。

そう考えたから、僕はここにいる。

母親や妹はとても喜んでくれているけれど、もしかすると僕はもう生きて帰ってこれないかもしれない。

一種の賭けだった。

夏美が生きていてもいなくても、会える方法を僕は大学で知ってしまったから。

自分の魂を利用して。

その前に僕は会いに行かなくてはいけない人がいる。

どうしても、話を聞かなくてはいけない人がいる。

田中友紀。

僕と夏美の同級生。

夏美の親友だ。

彼女に話を聞かなくてはまずは何も進まない。

僕は事前に田中に連絡を入れていた。

ただ、その時の田中の様子が少し変だったことがとても気にかかる。

「え、黒井くん?どうしたの、久しぶり」

「もう大学最後の夏休みだからさ、ちょっとそっち帰ろうと思って」

「そうなんだ。でも、なんであたしに連絡してきてくれたの?」

「あのさ、ちょっと話がしたいんだ」

「何、告白でもされるの?ふふ」

「違うよ。桐原のこと、聞きたいんだ」

「夏美なら、もう…」

「僕はもうそれはどっちでもいいんだ。ただ、真相が知りたいだけなんだ」

「真相なんて闇の中よ。変質者が毎年現れて、連れ去られた。そういうことよ」

「ならなんで桐原以降、ないんだ?」

「飽きたんじゃない」

「絶対に僕と話したくないっていうなら、無理強いはしないけど」

「そんなんじゃないわ」

「なら、会うだけ会ってよ」

「…わかった」