読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

保証人保護、進まぬ恐れ 「共謀罪」優先で民法改正案は… 

企業や個人の契約ルールを定めた民法の債権分野を大幅に見直す民法改正案が二十五日、参院法務委員会で本格的な審議に入る。衆院では法案の問題点を修正するための議論が不十分なまま可決され、通過した。政府・与党は犯罪の合意を処罰する「共謀罪」を創設する組織犯罪処罰法改正案を早期成立させるために民法改正案の審議を急いだ。

■不備

 民法の債権分野の抜本改正は明治時代の制定後、約百二十年で初めて。改正項目は約二百に上り、取引条件を示した「約款」の規定の新設や、未払い金の時効を原則五年に統一する規定などが設けられる。

 衆院の審議では▽若者や高齢者の知識・経験不足に付け込んだ不当な契約を無効にできるよう「暴利行為」という考え方を明文化するかどうか▽中小企業などの経営者が融資を受けるために親戚や知人などに保証人になってもらう際、保証人の保護策をどれだけ拡充できるか−などが大きな課題となった。結局、改正案は修正されなかったが、衆院通過の際、「暴利行為」や「個人保証人の保護」などについて法施行後の対応検討など付帯決議がつけられた。改正案に不備な点があり、積み残したことの証しだ。

■焦点

 特に、焦点となったのが個人保証人の保護策の拡充だ。中小企業の融資を巡っては個人的な義理人情などで安易に保証人を引き受けたり、事業者同士が互いに保証人になったりして、事業者が倒産した場合に保証人が多額の借金を背負わされて身ぐるみはがされ、自殺するなどの悲劇が起きてきた。

 改正案では、保証人になろうとする人が経営者の親族や知人・友人のような第三者だった場合、検察官OBなどが任命される公証人に口頭で保証人になる意思を示し、それを書面にした公正証書を作成しなければ無効にするという規定を設けた。公証役場に行って、公証人が責任の重さを伝えることで安易に保証人になるのを防ぐのが狙いだ。

■懸念

 これに対し、保証被害対策全国会議事務局長の辰巳裕規弁護士は「社会問題化した商工ローン大手『商工ファンド(SFCG)』の再来の懸念がある」と危ぶむ。公正証書には事業者が返済できなかった場合に、裁判なしで自宅や給料などの財産を差し押さえる強制執行ができる「執行証書」というものがあり、商工ファンドはこれを悪用して次々と強制執行をかけ、事業者や保証人の自殺者を出したからだ。公証役場で意思確認することで、同時に執行証書を作られてしまうことが懸念される。

 辰巳弁護士は「金融庁の監督指針では、金融機関に第三者による個人保証の原則禁止を求めている。民法でも事業向け融資での第三者保証は禁止すべきだ」と指摘。「書類にはんこを押すだけの公証人もいる。執行証書の作成禁止や、安易な保証が死活問題になるという説明を義務付ける規定が必要だ」と訴える。

 また、今回の改正案では、個人事業主の配偶者には公証人による意思確認が義務付けられていない。

 日弁連消費者問題対策委員の黒木和彰弁護士は「事業者の配偶者が離婚した場合、元夫が何をしているかも知らず、養育費ももらっていないのに突然、連帯保証債務だけ求められることがある。本当にかわいそうな事例が少なくない。参院では、ぜひとも修正してほしい」と求めている。

 (西田義洋)

 <公証人> 検察官や裁判官、弁護士など法曹有資格者から法相が任命する。長年、法務事務に携わった検察事務官OBなどが審査会で選考された場合も任命できる。公正証書は公証人が私的権利に関して作成した公文書で、遺言や任意後見契約、金銭貸借、土地・建物などの賃貸借、離婚に伴う慰謝料・養育費の支払いなどに関するものがある。作成手数料もかかる。公証役場は全国に約300カ所ある。